どーも、arizonaです。
それはとても蒸し暑い夜のことだった。 今朝のニュースでは今年一番の熱帯夜になると言っていた。 「はぁ~、明日会議だしちゃんと寝れるといいけど。」 会議の前日の残業は恒例となっていた。 広報部の下っ端総出で5日間、ないしは一週間残業するのである。 そもそもこうなったのも部長の怠慢さが原因であることに異論はないだろう。 先代社長が亡くなって若社長が引き継ぎ、事業拡大を前面に押し出すのが目的だと言われる新体制に替わり、社員は希望に胸を膨らませ、先々代社長の頃の勢いを取り戻そうという意志が会社中に浸透した。 しかしその新体制というのが名ばかりで、先代社長の恩恵を存分に得てある程度の地位にいた人たちが、温厚でまだ穢れをしらない若社長を圧迫し、各部署の重要なポストに居座ったのだ。 そのため私たちにしわ寄せが来るのは当然のなりゆきだろう。 もちろん仕事ばかりに神経を使っているわけじゃない。 ちょうど2週間前に上司に誘われた。 上司といってもたった5期上だけのことで年齢は29歳だと言う。 結婚して幸せな家庭生活、というものを夢見たことはある。 でもそのたびに、私にはまだ関係ない話、と言い聞かせてきたのだ。 だから今回もそう自分に言い聞かせたが。 しかし、本当にそうだろうか。 もし、もし・・・彼なら・・・。 いやいや考えるだけ無駄なことだ。 とにかく明日の会議だけに集中しなければ。 でも、 「どうしたいんだろう、私。」 電車を降り、駅を出た。 いつもどおりだとここから歩いて10分で家に着く。 タクシーが道沿いに並んでいる。 「タクシーの運転手も夜遅くに大変だなー」と思いながら歩く。 街の明かりが徐々に寂しくなり、もはや道には街灯だけになった。 このあと帰ってから何を食べようかと考えていると、遠くから何かが聞こえた気がした。 「ん?何の音?」 そのまま歩き続ける。 また音がした。 今度はさっきよりも大きい。 「こんな夜中に・・・子ども?」 明らかに不自然だが、子どもの笑い声にしか聞こえない。 構わず歩く。 さっきから空気が湿っている気がする。 それも、駅を出たときと比べても明らかだ。 進めば進むほど生ぬるくて湿った空気になる。 「なんなの、これ。」 ・・・! また子どもの笑い声! 今度はもっと大きい。 「なんか・・・気味悪い・・・。」 生ぬるくて湿った空気もさっきより密度が濃いものとなってきた。 首筋を汗が滴る。 歩く。 家まであとちょっとだ。 ! また子どもの笑い声がした! なんで?! ずっと聞こえる! 「なにこれ?!」 怖い。 私は走った。 でも笑い声は聞こえたままだ。 空気が・・・重たい。 包まれているかのようだ。 空気がもっと重たくなっ・・・ 私は止まった。 意図して止まったのではない。 動けない・・・! やわらかくて重たい空気に全身を包まれているみたいだ。 懸命に走ろうとしても足がゆっくりとしか動かない。 空気を手で払いのけようとしても意味がない。 笑い声が、もっと大きくなる。 耳が・・・耳が・・・おかしくなる。 風が吹いた。 生ぬるくて湿った風だ。 風が私を行きたい方向とは逆、つまり後ろへ押す。 とうとう動けない。 笑い声が、もっと大きくなる。 後ろから、笑い声が、する。 大きな、笑い声が、後ろから。 「やだ!やだ!」 走りたいが体は後ろに流される。 声が、近い。 笑い声が、近い。 風が、まとわりつく。 とても、湿っていて、生ぬるい。 風が、私を、 風が、 風が ―――fin. お盆ですよ。 俺お盆が嫌いなんですよね。 だってテレビもラジオも心霊特集みたいなのやってるじゃないですか。 あれ勘弁して欲しいですよね。 あ、上のは「怖い小説」のつもりです^^; やっぱ文章で怖くするのって難しいですね。 自分で読んでてもコントとしか思えない(笑) 俺に文才があればなぁ・・・。 ランキングに参加しています 応援してくれたら嬉しいです PR どーも、arizonaです。
久々にやってきました。 懐かしいですね。 「この小説が良いのだよ」って何??という人のために、↓に今までの歴史を用意します。 <「この小説が良いのだよ」シリーズ> さて、2つ前の記事に書いてありますが、それはこの本のことです。 『君の名残を』 前にも書きましたが、長いんです。 総ページ数は581ページにも及び、文字も小さめです。 小説を読み始めたら1日で読み終えなきゃ気が済まない俺でも、なんだかんだいって3日かかりました。 まぁ時間が少なかった、というのもあるんですが。 でもこの小説にはそれだけの時間をかける価値があります。 著者は、あのベストセラー小説『四日間の奇蹟』を書いた浅倉卓哉です。 ですが『四日間の奇蹟』はまだ読んだことがありません。 前々から中古で探してはいるんですが見つかりません。 『四日間の奇蹟』は、上のリンクをたどった人ならわかると思いますが、以前俺が紹介した『チームバチスタの栄光』と同じ賞をとっています。 「このミステリーがすごい!」大賞の金賞です。 『四日間の奇蹟』は第一回で。『チームバチスタの栄光』は第四回でとっています。 つまりは、こんな輝かしい賞をとった作者の作品に誰もが期待をせずにはいられない、ということです。 内容を少し紹介しましょう。 簡単に言ってしまえば、歴史タイムスリップものです。 ただ、理解してほしいのは、これは浅はかな歴史ものではない、ということです。 これはどう形容していいのかわからないんですけど、リメイクというか、カバーというか・・・。 というのも、この作品は、あの日本における軍記物語の頂点に立つ『平家物語』が下敷きになっているんです。 この壮大な物語をリメイクできたのは、やはり浅倉卓哉の実力によるものなんです。 なんといっても特筆すべきは、その文章力。 同じ言語を操る者として尊敬せざるを得ません。 簡単なあらすじ この物語は現代に始まります。 幼馴染でそれぞれ剣道部の主将を務める白石友恵と原口武蔵が主人公。 ある雨の下校途中、二人は忽然とその姿を消した。 二人は平安末期の日本へと運ばれたのだった。 離ればなれになった二人は、やがて状況を知り、自分の人生をも知ってしまう。 この時代、あの悲劇の争乱をかけぬけた二人の武将を、みなさんは常識で、あるいは中学までの知識で知っているはずだ。 源義経と木曾義仲。 そして、それぞれの武将に影のように支えた者たちも有名だ。 義経の片腕、武蔵坊弁慶。 義仲の妻であり歴史上最強であろう女武士、巴御前。 タイムスリップした二人は、自分がその人物であることを知り、覚悟をする。 友恵 : ――私は義仲を、私の駒王丸を死なせはしない。 一時たりともそばを離れず運命から守ってみせる。たとえこの命にかえてでも歴史の思い通りになんかさせない。そのために巴になる。そのためだけに彼の妻になる。 武蔵 : ――時はやはり残酷だ。 義経の生を、その生き様を見届けたいと思っている。この男の片腕となるために時を越えたのならそれをまっとうしてやろうとも思う。それならば自分を納得させられる。 歴史上の二人の英雄を守る友恵と武蔵。 彼らが再び出会うとき、悲しみの運命が始まる。 『平家物語』を感涙のストーリーへとよみがえらせた超大作である。 この作品は娯楽にも勉強にも通用するものだと思います。 なぜなら、『平家物語』がまるごと詰まっているからです。 受験で日本史を受ける人にはもってこいですし、古文で『平家物語』が出ればストーリーも把握しているので問題が解きやすくなるでしょう。 ここまで有名な物語ですから、知っている人物も数多く登場しますし、知っている戦いも描いてあります。 さらに、浅倉流の『平家物語』なので、単なる歴史ものとしてだけでなく楽しめます。 ただ、言っておくことがあるんですが、これは所詮フィクションです。 ほとんどのストーリーはもちろん原作と同じですが、この『君の名残を』にとって特に大事な場面ではストーリーが変わっています。 この『君の名残を』では、「時」に対する倫理観も大きなテーマとなっています。 近いところで説明すると、「カルヴァンの予定説」ですね。 と、ここまで、実用的だということばかり言ってますが、もちろんおもしろいです。 感動します。 泣きます。 しかも随所随所で。 俺なんか泣き続けていました(笑) こんなにも皮肉な悲劇がこの日本にはあったのか きっと読んだら涙が止まらないと思いますよ。 最後に、 小説を紹介することが職業ではないので当たり前なんですが、 俺は本当におもしろいと思った小説しか紹介しません。 どんな形であれ是非読んでみてください。 とても長いので春休みあたりに読むのがちょうどいいんじゃないですか? いつか、もし読んだ人は感想を教えてください。 『君の名残を』 著;浅倉卓哉 宝島社 あれ? 面白そうなんだけど・・・ って思った人はクリックしてくれると俺は信じてます(´∀`) ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ くる天ダントツ1位爆走中(イェィ さぁやって参りました。『この小説が良いのだよ』。 気になる第3弾は・・・こちら!!
はいはい、もうお気づきになっている方も・・・うん、ちらほらいるね。 そう!これは、『この小説が良いのだよ』第1回に登場した、「チームバチスタの栄光」の2作目なんです。 前作に感動した俺は迷わず買い、今日一気に読んだ。 まずあらすじを・・・ 『 東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。 』 前作に引き続き、不定愁訴外来の田口、ロジカルモンスター白鳥の絶妙コンビが登場! 白鳥による修行(?)に耐えた田口がさらに進化を遂げて帰ってきた。 バチスタ・スキャンダルから9ヶ月。白鳥の旧友やら千里眼やら伝説の歌姫やら強烈キャラが新登場し、新たなストーリーへと・・・。 前作とは全く違う展開で、そこにはまた違う難しさも。 ラストには深い悲しみが・・・そして俺は涙(笑) 最近涙もろくてねぇ おもしろさに加えて感動も盛り込みパワーアップして帰ってきたこのシリーズを、あなたは、読まなければいけない!! 「ナイチンゲールの沈黙」 著;海堂尊 宝島社 『この小説が良いのだよ』第2回は・・・
これさぁー。 「サウスバウンド」。人気作家、奥田英朗さんの作品です。 まずはあらすじを。 『 小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうではないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族でどこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが…。型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。 』 これはですねー、なんていったらいいのか・・・。 人間の温かみ、とか家族の絆、とかを感じました。 小学6年生の少年目線なので、読む人によって感じ方が違ってきたりするはずです。 この小説は、俺にとって人生のバイブルになる気がします。 ここで、印象に残ったものをいくつか紹介します。 ”世の中には、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがある。” ”好きにしていいさ――。二郎は海に向かってつぶやいた。一緒に暮らすだけが家族ではない。” どうです??興味がわいてきたでしょ?? とりあえず、読んでみてください。 「サウスバウンド」 作者;奥田英朗 角川書店
『この小説が良いのだよ』記念すべき第1回は・・・ 「チーム・バチスタの栄光」。これはね、ホントにすごいよ。 作者が現役医師なだけに、これがリアルかぁー、と痛感させられる作品ですね。 今までのリアルが間違ってたみたいです。 最初は、一般的なミステリー。読みやすくて、すぐストーリーが進むはずです。 でも途中から強烈なキャラが登場し、論理的かつ強引な手法で解決に導いていきます。 読み終わったあとに出た言葉は、「何だぁ?!」でした(笑) とにかくおもしろい。この小説は、普段小説を読まない人にもおすすめです。 あらすじ 『東城大学医学部付属病院では、心臓移植の代替手術である「バチスタ手術」の専門チームを作り、 次々に成功を収めていた。ところが今、三例続けて術中死が発生している。 しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。 そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、 不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。』 「チーム・バチスタの栄光」 著者;海堂尊(かいどうたける) 宝島社 『このミステリーがすごい!』大賞受賞作 現役医師だからこそ描きうる医療現場のリアリティとコミカルな展開。最終選考委員が全員一致で即座に決定、本賞初の医学ミステリー。
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責めないでください。
今日出会えたことに感謝。